日本においてファイナンシャルプランナーというと、生命保険の営業さんをイメージされる方が多いのではないでしょうか。実はこの二つは似ているようで全く違う職業です。ここでは保険営業とFPの明確な違いについてお伝えできればと思います。
[box03 title=”こんな人に読んで欲しい”]・1社専属の保険営業マン
・保険FPを卒業したい人
・独立系FPに興味がある人[/box03]
1.明確な違いはその収益構造にあり!
保険営業とファイナンシャルプランナー(以下FP)との違いは様々ありますが、最初にその収益モデルの違いからお話していきましょう。
保険営業は言うまでもありませんが、保険を販売することで保険会社から販売手数料を受け取るという形で収益を得ています。それでは、FPはどうやって収益を挙げているのでしょうか。
答えをシンプルにすると「FPの6分野すべてにおいて収益が上げられる」ということなのです。
ちなみにここでの6分野とは、ライフプランニング、リスク管理、金融資産運用、不動産、相続事業承継です。
FPによって様々なスタイルがありますが、例えばお客様の家計管理、ライフプランニングをしてお客様から直接フィーをいただいたり、初めて自宅を買う方などに不動産購入のアドバイスをしたり、資産運用の計画と実行のお手伝いをしたり、賢い保険の入り方をアドバイスしたりします。
それぞれFPによって得意分野は異なるのですが、基本的にFPを名乗る以上、6分野すべてにおいてプロとしてお客様に価値を届け、売り上げを上げられるようでなければなりません。
そのように、6分野すべてが仕事になり得るFPと、仕事は保険のみ、という保険営業では大きな違いがあります。ただし6分野を守備範囲にするFPにはメリットとデメリットがあります。
メリットは、様々な分野で収益源があるので、お客様に保険を絶対売らなくてはならない、というプレッシャーが生まれないことでしょう。
デメリットは保険専業にならないことで、規模の経済が働かず、専業の方より収益力が低かったりします。また守備範囲が広いため、覚えないといけないことが山ほどあり、追及するとキリがありません。
2.FPはライフプランに基づいた保険提案をする
これはすべての保険営業がそうとは思いませんが、多くの場合、保険営業は保険提案の際、お客様の中長期的なライフプランではなく、「今」支払える金額しか考えません。
例えば、とある実際にあったケースですが、今10万円を毎月貯められる家庭があったとします。そのご家庭は今後10年後に教育費のピークが訪れて、5年以内には頭金を貯めて住宅購入をしたいと考えていたとします。保険営業はこの家庭に、毎月9万円の、しかも老後まで払い続けなければならない積み立て型の保険を勧めました。金融知識があまりないそのお客様はこの保険に加入してしまったのです。詳しい方ならご存じかもしれませんが、保険による貯蓄は、5年、10年など早期に解約をしてしまうと大きなペナルティーがあり、損失を出してしまうケースがほとんどなのです。この話を聞いてどうお感じになったでしょうか。
もしこの家庭がライフプランをベースに考えるFPに相談したらどうなっていたでしょうか。
FPは中長期的に現金がしっかり確保できるかを分析するため、貯蓄型の保険を仮に提案するにしても家庭の貯蓄可能額に対して占める割合はかなり限定的になるはずです。
3.日本におけるFPの歴史は30年、保険営業は戦前から
FPの最大の課題といってもいいかも知れませんが、歴史が浅く、認知度が低いのです。保険の営業マンだと言えばお年寄りから小学生までどんな仕事なのかだいたい想像できるのですが、FPをやっていますと言ってその仕事内容がパッと頭に浮かぶ方はどれほどいるでしょうか。少なくとも筆者の友人知人には事細かに補足説明をしないとその仕事について理解されません。同業者以外で、何も言わなくても理解されたケースが一度たりともないのです。
認知度の低さは世の中を見渡しても明らかです。保険屋さんは大型スーパーの中だったり、街中だったりによく見かけるでしょう。しかし、FP事務所と大きな看板を掲げたお店を見たことがあるでしょうか。きっとほとんどの方が一度も見たことがないでしょう。FPという職業が「何屋さん」なのかがもっと世間に浸透しないと保険屋さんのようなお店の構え方は難しいでしょう。
つまりここで何が言いたかったかというと、保険営業より、FPのほうがお客様に価値を届けるまでのマーケティングというプロセスが難しいということなのです。
FPサービス3万円です、と広告を出してもきっと売れないでしょう。世間に浸透していない今の日本の状態ではまず、お客様に席についてもらって、じっくりとFPについて説明する必要があるでしょう。そのために本題の手前にもっと分かりやすい別の分かりやすい商品を置かなくてはならないのです。
今はこのように認知度が低いFPですが、いずれアメリカのように、良き弁護士、医者、FPを友に持ちなさいと言われるような世界になればとFPとして感じます。
4.さいごに
何かの分野に偏って専業になったほうが儲かるし分かりやすい、というのが一般論です。ところがFPはそれではお客様のライフプランが守れない、ということであえてその一般論に逆行する形をとっています。自分が売りたいものではなく、お客様にとって本当に必要なものは何かを追求し、価値を提供していくことがFPの存在意義だと思います。FPとは、何かと悪いニュースが多い金融業界と不動産業界に対するアンチテーゼなのです。